認知症の人を含む遺産分割協議
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[相談]
遺産分割協議を行いたいのですが、相続人の中に認知症の人がい
ます。どうしたらよいですか。
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[回答]
相続が発生し有効な遺言書のない場合は、原則として遺産分割協
議を行わなければ、財産をわけることができません。
また、遺産分割協議を有効に行うためには、「行為能力」が必要
です。「行為能力」とは平たく言えば、「自分がいったい何をして
いて、この法律行為の結果、どうなるのかがわかる能力」のことで
す。
いわゆる認知症の人は、この行為能力が完全でないことから、単
独で有効な法律行為をすることができません。遺産分割協議も法律
行為に該当しますから、認知症の人は遺産分割の協議ができないと
いうことになります。
このような場合に遺産分割協議を行うためには、後見人の選任が
必要です。後見人は、認知症の人など(「被後見人」といいます)の
お金の管理をしたり、訪問販売で高価な買い物をさせられてしまっ
たときなどに、その契約を取り消したりする役割を担います。また、
代わりに遺産分割協議を行うことができます。後見人は、家族がな
ることが多いですが、司法書士等がなる場合もあります。
しかし、この「後見人」は、一旦選任されると、よほどの事情が
ない限り途中でやめることはできず、一生続けなければなりません。
この点で、遺産分割協議のためだけに選任する特別代理人とは大き
く異なります。また、後見人になると、毎年被後見人の財産の収支
を計算して家庭裁判所に報告するなどの義務も生じるため、相当の
覚悟が必要です。
更に、後見人が家庭裁判所で選任されるまでには、書類の準備期
間等も含めて半年ほどの時間がかかる場合もあります。その間、遺
産分割協議ができないこととなりますので、被相続人の財産は一切
動かせません。
このような事態とならないためにも、推定相続人の中に認知症の
人がいる場合には、遺言書を書いておくなどの対策をされておくこ
とをお勧めします。
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