▼役員給与とは
今回のお話を進める前に、まずは役員給与についてよくある質問を解消したいと思います。
従来の法人税法では、役員賞与→損金不算入、役員報酬・役員退職給与→原則損金算入とする構成になっていました。
しかし、今回の税制改正により、これら3つを一括して「役員給与」として規定して、その上で損金算入・不算入の定めができました。
つまり、役員給与とは役員へ支払われる給与全てをいい、月々の給料(役員報酬)・賞与(役員賞与)・退職金(役員退職給与)の3つ全てを指します。
まずはこの部分をしっかりと理解しましょう。
▼損金算入の役員給与
役員給与のうち損金算入するものについて、退職給与等以外のものについては次に該当するものと定められました。
○定期同額給与:支給時期が1月以下の一定の期間ごとえあり、かつ、その事業年度内の各支給時期における支給金額が同額である給与
○事前確定届出給与:所定時期に書く定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与で事前に所轄税務署長に届出をした給与
○利益連動給与:同族会社以外の法人が業務執行役員に支給する利益に関する指標を基礎として算定される一定の給与
※退職給与、一定のストックオプションに係る費用及び使用人兼務役員の使用人分給与に関しては従来通り損金算入されます。
上記のうち、利益連動給与については非同族会社の公開会社のみの該当となるため、説明は省略致します。
ただし、不相当に高額な部分の役員給与や事実を隠ぺい・仮装して経理することにより支給する役員給与については、
上記に該当していたとしても損金算入されません。
▼定期同額給与
定期同額給与とは、読んで字のごとく定期的に同額の給与ということです。
従来、役員報酬について期中において増額があっても損金算入されていました。
今回の税制改正において、期中に定期的かつ同額の役員給与しか損金として認められないことになりました。
つまり、株主総会において一度決めた役員給与は1年間ずっと同じ額でなければならないということです。
特例として、経営状態の悪化などに伴って減額した場合については、そこから先はその減額した金額が定期同額な給与とされ認められます。
しかし、一度減額した給与を再び増額した場合、その増額した部分は損金として認められません。元の同じ金額にしてもダメということです。
ブログにてもう少し詳しい内容をご紹介しております。 →ブログはこちら
▼事前確定届出給与
こちらも読んだままの意味になりますが、事前に税務署へ届け出た給与が確定した給与として損金になるというものです。
従来損金として認められなかった役員賞与についても、この届出をすることで損金算入とすることができるようになります。
それだけを聞くと「役員でもボーナスがもらえる!」と思われがちですが、やはりそう簡単な話ではないようです。
まず問題なのが、届出が『事前』だということ。規定によれば、その給与に係る職務の執行を開始する日と各事業年度開始後3ヶ月以内のどちらか早い日
までに届出をしなければならないとされています。
さらに、この届出をしたことでその給与については確定したものとなるため、仮に減額して支給したり増額して支給したりすると、その全額について
損金不算入となるのでしっかりとした計画に基づいて届出をする必要があります。
ブログにてもう少し詳しい内容をご紹介しております。 →ブログはこちら
▼特殊支配同族会社の役員給与
役員給与に関する改正のうち、税理士業界において騒然としたのがこちらの給与です。
こちらは前述している役員給与で損金算入されたもののうち、特殊支配同族会社の主宰役員に対する給与は一定額を損金不算入とするというものです。
複雑な内容になっていますので、一つずつ説明をしていきます。
■特殊支配同族会社とは
同族会社の業務主宰役員及びその役員と特殊の関係のある者(以下「主宰役員等」とします。)
が発行済株式の総数の100分の90以上の数を有し、かつ、主宰役員等で常勤役員の数が常勤役員の総数の過半数を占める場合の同族会社をいいます。
つまり簡単に言えば、社長=筆頭株主である会社の場合、主宰役員が社長です。
社長一族が株式の90%以上を有していて、かつ、常勤役員の過半数が社長一族の場合に適用となります。
■損金不算入となる一定額とは
上記特殊支配同族会社に該当する場合に、利益と主宰役員給与の合計の過去3事業年度の平均が800万円を超えた場合にその給与額のうち給与所得控除部分が損金不算入となります。
つまり、過去3年間の利益と主宰役員給与の合計の平均が800万円以下であればその対象からは外れます。
今回は平成18年の税制改正のうち、役員給与にかかる部分について触れてみました。
税制改正でも今回の内容は非常に複雑なものなので、税理士または税務署へ事前にご確認することをお勧めいたします。
不明点、疑問点などありましたら、お気軽にご連絡ください。
|