3月や4月は人の入れ替わりが多い時期でもあります。
最近は退職金を支払う事業者も少なくなってきているようですが、古くから営んでいる場合、退職金制度が存在している事業者も少なくありません。
そこで、今回は、退職金の支払いに関する税金の取扱いについて、整理したいと思います。
退職金を支払う際、支払者側である事業者は、所得税・住民税の源泉徴収を行い、その金額を退職金から差し引き、残高を支払います。そして、退職金の受領者へ「退職所得の源泉徴収票」を原則1か月以内に渡します。忘れてしまいますので、退職金支払いの際に同時に渡してしまうのがよいでしょう。
そして、源泉徴収を行った所得税や住民税は翌月10日までに、所得税は事業者の所轄税務署へ、住民税は退職金の受領者のその年1月1日現在の住所地の管轄する役所へそれぞれ納付します。(所法199、地税50の2、328)
もし、退職金の受領者が法人の役員等の場合には、「退職所得の源泉徴収票(税務署へ提出)」や「特別徴収票(役所へ提出)」の提出が必要となります。受領者へ渡す源泉徴収票を含め、これらの書類は名称は違えど同じ書類です。税務署でもらうこともできますし、国税庁HPよりダウンロードして使用することもできます。
ところで、退職金を源泉徴収する際、「退職所得の受給に関する申告書(退職所得申告書)(以下「受給申告書」)」の提出を退職金の受領者から受けているか否かで、それぞれ次のように徴収金額の計算方法が異なります。
1.受給申告書の提出を受けている場合
(1)受給申告書に、同年中に他の退職手当等で既に支払いがされたもの(以下「他に支払済みの退職手当等」)の記載がない場合
@所得税 (所法201(1)一)
(退職手当等−退職所得控除額[※1])×1/2[※2]=退職所得金額
退職所得金額×所得税の税率=源泉徴収税額
[※1]退職所得控除額(所法30(3))
(イ)勤続年数20年以下…400,000円×勤続年数
(80万円未満の場合は、80万円)
(ロ)勤続年数20年超 …700,000円×(勤続年数−20年)+800万円
障害退職の場合は上記金額に100万円加算する。
[※2]平成23年度税制改正により、平成24年分以後の所得税について、
役員等に対する退職金のうち、役員等の勤続年数が5年以下の場合
には、1/2を乗じる措置が廃止となります。
A住民税(地法50の3〜4、50の6@一、328の2〜328の4他)
上記(1)@退職所得金額×10%[※3]×0.9[※4]=源泉徴収税額
[※3]所得割…道府県民税4%+市町村民税6%=10%
[※4]平成23年度税制改正により、平成24年1月1日以後支払については、
0.9を乗じる措置は廃止となります。
(2)受給申告書に、他に支払済みの退職手当等の記載がある場合
@所得税 (所法201@二)
(退職手当等[※5]−退職所得控除額[※1])×1/2[※2]=退職所得金額
退職所得金額×所得税の税率=税額
税額−他に支払済みの退職手当等の源泉徴収税額=源泉徴収税額
[※5]他に支払済みの退職手当等+今回支払う退職手当等=退職手当等
なお、[※2]により、改正後は役員退職手当等と役員退職手当等以外の
退職手当等が混在する場合には、上記計算方法とは異なります。
A住民税(地法50の3〜4、50の6@二、328の2〜328の4他)
上記(2)@の退職所得金額×10%[※3]×0.9[※4]=税額
税額−他に支払済みの退職手当等の源泉徴収税額=源泉徴収税額
2.受給申告書の提出を受けていない場合
(1)所得税 (所法201B)
退職手当等×20%
(2)住民税(地法50の3〜4、50の6A、328の2〜328の4他)
上記1.(1)Aにより計算した源泉徴収税額
なお、受給申告書は、退職手当等の支払者である事業者が保管し、税務署長や自治体から特に提出を求められた場合以外は提出する必要はありません。