3月11日、東北地方太平洋沖地震が発生しました。多くの命が失われたことに謹んで哀悼の意を表し、被災された方々には心よりお見舞い申し上げます。
さて、この震災に関して、取引先事業所や工場などが被災地となった場合、安否確認はもとより、復旧までの支援をお考えになる場合もあります。
支援には、義援金を送る、支援物資を送る、債権回収期間を延ばす、債権を免除する、資金を無利子で貸し付ける、などが考えられますが、これら支援を直接取引先へ行った場合には、どのような税制上の措置が考えられるのでしょうか。
通常、法人が取引先へ利益供与を行った場合には、交際費等あるいは寄附金になるかなど検討しなければなりません。
しかし、今回のような震災について、被災された取引先の復旧を目的とした支援については、特例措置が設けられています。この場合の取引先とは、得意先、仕入先、下請工場、特約店、代理店等のほか、商社等を通じた取引であっても価格交渉等を直接行っている場合の商品納入先など、実質的な取引関係にあると認められる者を指します。
たとえば、次のような取引先への支援については、通常交際費等に該当するところ交際費等に該当せず、損金として取り扱われます。
1.取引先へ義援金(見舞金)、支援物資を送った場合(措通61の4(1)-10の3)
法人が、被災前の取引関係の維持、回復を目的として災害発生後相当期間(※)内に被災された取引先に対して行った、次の費用は交際費等にはなりません。
(1)災害見舞金の支出
(2)事業用資産の供与(自社製品・他社製品問わず)
(3)役務提供費用
(4)自社製品を扱う小売業者等に対して災害滅失や損壊した商品と同種商品の交換あるいは無償補てん費用
(5)被災された取引先従業員に福利厚生の一環として供与される物品供与
上記見舞金等を受け取った被災者側の取引先は、原則益金として処理しますが、上記(5)の他、少額減価償却資産に該当するものについては、益金処理としなくてもよいこととされています。
2.債権を免除、資金を無利子で貸し付けた場合(措通61の4(1)-10の2)
法人が、被災された取引先に対して復旧支援を目的として災害発生後相当期間(※)内において売掛金、未収請負金、貸付金その他これらに準ずる債権の全部又は一部を免除した場合のその免除したことによる損失は、交際費等にはなりません。
また、すでに契約で定められたリース料、貸付利息、割賦販売に係る賦払金等で災害発生後に授受するものの全部又は一部の免除を行うなど契約で定められた従前の取引条件を変更する場合及び災害発生後に新たに行う取引につき従前の取引条件を変更する場合の損失も、交際費等にはなりません。
(※)相当期間とは、被災された取引先が通常の営業活動を再開するための復旧過程にある期間をいいます。