サラリーマンは、確定申告不要制度が設けられています。この制度は、一定の条件に該当する場合には所得税の確定申告をしなくてもいいですよ、という制度です。この制度があるために、サラリーマンのほとんどの方が確定申告をしなくてもよいことになっています。一方、年金所得者は、今までこのような制度がないために、たとえ数万円のことでも毎年所得税の確定申告手続きを行わなければなりませんでした。
◎平成23年度税制改正により年金所得者の申告手続きが簡素化
しかし、平成23年度の税制改正により、次のすべての条件に該当する方は、所得税の確定申告手続きを行わなくてもよいことになりました。
┌─────────────────────────┐
│(1)公的年金等の収入金額が年間400万円以下 │
│(2)上記(1)以外の所得金額が年間20万円以下 │
└─────────────────────────┘
ただし、年金所得者世代は医療費の支払いが比較的多く、医療費控除の適用を受けたい場合もあろうかと思います。このような場合には、引き続き所得税の確定申告手続きを行う必要があります。これは、医療費控除の他、寄附金控除、雑損控除、年金から控除されない社会保険の普通徴収分などの社会保険料控除、生命保険料控除や地震保険料控除など、現行、公的年金等の支払いを受ける際に差し引かれる源泉所得税の計算上考慮されていない所得控除項目を受けたい場合などが該当します。
確定申告手続きを行う場合には、基本的にすべての所得を申告する必要があります。特に、上記(2)の所得がある方については、上記(1)及び(2)の申告をした上で医療費控除の適用を受けることになります。そのため確定申告手続きをした方が、税金は得をするのかどうかを予め試算する必要があります。確定申告手続きを行った後に「やっぱり申告はやめます。」といって撤回することはできませんので、申告するかどうかの選択は慎重に行いましょう。
なお、所得税の確定申告手続きが簡素化されても、住民税の確定申告手続きまで簡素化されてはいません。上記の条件に該当して所得税の確定申告手続きを行わない場合であっても、上記(2)の所得があれば住民税の確定申告手続きは行う必要がありますので、ご注意ください。